さて、期間が少しあいてしまいましたが、靴の製法についての続きです。
革靴は、どの製法で作られたかで、その用途が大きく異なってきますというのは前回書きました。
今回は、紹介しきれなかった製法を記載します。
4、ブラックラピド製法
–以下、他のサイトより–
マッケイ縫いを施したソールに、さらにもう一枚ソールを縫いあわせた、比較的新しい製法。グッドイヤーウェルト製法の耐久性の良さと、マッケイ製法の返りの良さをかけあわせたような製法である。また、単なるマッケイ製法では、雨の日などは縫い目から水がしみてきてしまうということがあるが、この製法の場合、構造上問題ないという事が出来る。イタリア等の、ヨーロッパ製の高級紳士靴によく使われている製法である。
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先のページでも紹介した、有名な製法のいいとこどりをした 製法です。
上の図を見て頂けると分かりやすいと思いますが、マッケイ縫いと、出し縫いがある事によって、
丈夫かつエレガントに作る事が出来ています。
ただ、こちらの製法は、日本ではまだまだ作る職人さんが少ないためか、用いられている靴が少ないという点が難点で、
修理に出した際などは業者をしっかりチェックしないと、修理する事が出来ないかもしれません。
また、その為、値段も高いです。
5、セメンテッド製法(ラバー製法)
–以下、他サイトより–
アッパーと底材を接着で貼り合わせる製法で、略して「セメント製法」とも言う。日本には戦後間もなく入ってきた技術で、縫い糸を使わず靴が造れることで、当時量産の難しかった靴に画期的な技術革命をもたらした。国内では、1952年頃から本格的な量産に入り、現在では接着剤の進歩とともに、かなり多くの靴がこの製法で造られている。材料を選ばない製法のため、多種多様なデザインや素材を使った靴を造ることが可能になった。中物には一般的に、クッション性のよいスポンジ素材(フェルトなど)が使われる。
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今日、我々が靴を安価に買う事が出来るのは、この製法によるところがかなり大きいです。
当サイトで扱う靴には、使用されているものはありませんが、
街の靴屋さん(A○Cマートとか)などに行った際に、店先に展示されているものの7割は
この製法を用いていると思ってもらうと、その凄さが分かると思います。
比較的安価な製法ですが、履き心地という点、修理のしやすさという点では、
他の追随を許さない庶民の味方と言った製法だと言えます。
6、その他の製法
ここに挙げきれませんが、他にもまだまだ優れた製法、用途に応じた製法があります。
一部をご紹介して、全2回の製法に関するうんちくを終了にしたいと思います。
・サイドステッチ製法
甲革とソールを直接縫い付けるが、カップソールと呼ばれる縁がせり上がったソールを甲革にはめ込み、外周を縫合する。縫い目が地面に直接触れないので、地表に水分が有っても靴の内側まで水がしみこむことは無いが、縫い目まで濡れる場合は足がぬれてしまう。テニスシューズなど、スポーツシューズ(特定の用途に特化した靴。スパイクシューズなども含む。)にこの製法が多い。かかとが無い平底になるため、シャンクは入れない。
・インジェクション・モールド式製法
一般には「インジェクション製法」と呼ばれている射出成型による製靴方法のこと。「射出成型法」とも言う。金属製の型(金型)に、熱で溶かした塩化ビニルやポリウレタンを、圧力をかけることによって勢いよく注入し、靴全体や本底を一発で成型する方法。ほとんどの長靴は、この製法でつくられている。またこの方法で本底の成型と底付けを同時に行うのが、ダイレクト・ポリウレタン・ソーリング。アッパーをセットした本底の金型に、溶かしたポリウレタン液を注入し、中で発泡させ、冷えて固まることによって、本底を成型しながらアッパーと結合させる。効率よく量産できる製法として評価されている
・カリフォルニア・プラット式製法
欧米では「スリップラステッド」日本では「プラット式」とも呼ばれる。甲革、中底、裾テープの三つを縫い合わせ、あらかじめ袋状し、そこに靴型をさし込み、底付けは裾テープをそのまま巻き込むか、底面に熱い中物を入れて巻きつけて本底をつける。これによって底部にプラットフォーム(=台)があるように見えるので、「プラット」という名称がついた。また、縫い合わせるため中底は薄く、柔らかい材料を使うので屈曲性に富む。履きやすく、カジュアル感があることから、紳士から婦人、子供靴まで広く採用されている。
・オパンカ製法
ソール側を引っ張り上げ、あえて見える所で縫い合わせる意匠的な製法。本底とミッドソールを接着し、ダシ縫いする。ミッドソールを水でぬらし木型に貼り付けクセ付けをする。アッパーを中底につり込み、あらかじめクセ付けしておいたミッドソールを接着剤で貼り付ける。その後ミッドソールと表革をスクイ縫いする。
世界には、まだまだ他にもいろんな製法があります。
自分の靴が、どのような意図で、どのような製法を用いて作られたかを知ると結構楽しいものですよ。
是非、靴の中の世界にも、目を凝らしてみてください。
これで、製法の話を終わります。